こころ豊かな暮らし

雑記帳のようなものです。

菊の栽培をかじりはじめたボクの気づき・感じたこと

 

 

実は、4月から月に1回、長野県茅野市へ菊の栽培をお手伝いしに行ってます。荘厳な山々に囲まれ、土と動植物に満ち溢れたの自然環境は、足を運ぶたびに僕の心と身体が癒してくれます。めちゃ楽しいし、気持ちいい。

今回は、あまり茅野プロ(仮)の活動内容ってあまり出てないよなと気づいたので、ちょっとした紹介も兼ねて自分の体験とかを残せたらなと思ってます。

 

追記:先日の現地入りの際に、信濃毎日新聞さんが記事を書いてくださったのでぜひみてください。いい写です。

東大院生らが「結」の文化に着目 茅野市のキク農家で農業体験|信濃毎日新聞デジタル

 

 

「結(ゆい)」ってなに?

日本の文化として残る「結」の文化。別の言葉に置き換えると、協働、村八分、互酬、相互扶助(wikipediaより)。つまり、1,2人では莫大な費用と時間と労力がかかる作業を、助け合っていこうという集落単位での文化のこと。

あと、一度は歌ったことがあるだろう沖縄の有名な曲「ゆいまーる」も同義。漢字に変換すると「結回」となるこの言葉は、「結=相互扶助」「回=続いていく」といった意味を持っている。素敵。

(ちなみに、茅野からの帰りの車で、ゆいまーるを合唱した時に初めて意味を知りました。)

加えて、北陸の五箇山の方にも茅葺屋根職人の間に結の文化が根強く残っていることを知った。すごく個人的なことだが、富山県が本籍ということもあってちょっぴり嬉しい。

 

CSA(Community-Supported-Agriculture)との違い

巷で、先進的な農業モデルとして有名なCSAだが、ふと「結」との違いが気になり調べてみた。簡単にまとめると、「CSA=見返りあり」「結=無報酬」らしい。

消費者の生産物への前払いをすることで、農業従事者の生活の安定をはかるCSA。一方で、無報酬で助け合い、つながり・絆を生み出していくのが結のようだ。

 

未来型「結」の実践である茅野プロ(仮)の紹介

3月末に始動し、現在は世紀文庫のある茅野の菊農家さんの下へ、月1回お邪魔している。前述した、日本の結の文化に着目して新しい農業のカタチを実践しよう、というのがプロジェクトの主旨だ。

実際に体験するとそれまで僕がイメージしていた、のんびりとした生活や暮らしができるんだろうな、という理想とはかけ離れていた。効率とスピード、一回一回の作業の精度の高さが求められ、且つ体力が必要不可欠。何よりも、その日の天候によって作業の難易度は変わり、自然の厳しさを感じている。

もちろん作業は大変だけど、農作業をする場所は雄大な山や、緑豊かな森に囲まれていて魅力に詰まっている。お昼寝をすれば、用水路を流れる水の音や、風で木の擦れる音だけが聞こえてくる。時折、季節ごと鳥たちの声に耳を傾けるのは面白いし、癒しだ。ウグイス、閑古鳥(カッコウ)、キジ、フクロウなど。

そんな感じで、動植物がびっしり詰まった自然に満ち溢れた環境に、どっぷり浸かりながら農作業してます。

(興味ある方はご連絡ください!)

受け入れしてくださっている鈴木夫妻イチ押しの風景。僕も大好きー!

 

4月やっていたこと紹介

挿し芽

小さい苗を約3万株を穴の空いた発泡スチロールの中に挿していった。

一つの発泡スチロール1箱に挿せるのは約300株で、100箱ほど作らなければならなかった。ほぼ1日分をそれに費やしたが、どうやったら素早く挿すことができるのか試行錯誤して、みんなで早い人のやり方を真似て競ったりした。

最近、挿し芽した苗を定植した際に気づいたことだが、うまく挿すことのできなかった苗は全く育たない。やっぱり1つ1つの作業って単純にみえるかもしれないけど、実はめちゃめちゃ複雑で、育つか育たないかの勝負だなって思う。

 

ビニールハウスの整備

養鶏場でお手伝いした時もそうだったが、本当にコテコテの土木作業だった。菊の成長を促進するために、布をかぶせるようにすためのレールのようなものだったりを金槌や脚立、ビニルパイプなどを使いながら作業していた。本当に重労働で、これらの作業をほぼ1,2人で全部やっていたと言うのを聞いたが信じられない。それくらい難しいし、大変だった。

 

5月やっていたこと紹介

田植え

僕は5年ぶりの田植え体験だった。やまファームさんは田んぼを借りて、近隣住民の方と協力して稲作をしている。住民の方は農業を営んでいるわけではないが、お手伝いをしてくれる代わりにお米をあげるという形で関わっている。ちなみに今回植えた分は約3年分はあるらしい。お米が大好きな僕としてはとても魅力的だった。

 

ピンチ(摘芯)

次にピンチ*1。ハサミをつかって右から左に空きがないように摘んでいくのだが、教えてくださった鈴木さんの奥様が本当に早い。僕が1つの畝を作業している間に、2つの畝をすでに終わらしているくらい。ハサミも決して扱いやすいわけじゃないし、ずっと便所座りの姿勢で横移動する中で一定のリズムでピンチしていくのはすごく難易度高かった。

 

定植

最後に定植。すごく大変だったけど、一番楽しかった。作業小屋から少し歩いたところにある露地の畑で行っていたが、周りに遮るものがなく山の見晴らしも良くてすごく気持ちがよかった。僕は植えるのよりも、苗を植えるための穴をつくる役割だった。鈴木さんお手製の器具を使って、土に穴を空けていく。これも奥が深くて、苗がちょうど入るくらいの浅くなく深くもない適度な穴をつくらなければならず、力加減が難しい。作業を繰り返しながら、微調整し、且つ土が乾かないように早くしなければならない。

とても難しいし、器具も軽いわけでないのでずっと筋トレしている状態だったが、時折辺りを見回すと最高の自然があって愉しくできた。

しかし、昨日(6/5)に茅野で大雨があり、定植した苗たちがいくらかダメになってしまったらしい。写真を見ると畑は雨で水浸しでグジョグジョ。自然の恐ろしさを感じた。

 

感想

本当に農業は複雑で、ただ身体を動してれば植物が育つなんてことはない。本当に頭使うし、色んなところに目を向けながらどうやったら上手く育つんだろうって考えつづける。鈴木さんの「トライアンドエラーの繰り返し」っていう言葉がめちゃめちゃに響いている。

 

最後にひとこと

地球マジでかい。

*1:ピンチはすでに定植された生育中の芽の先端を摘み取る作業のこと。植物は下に生えている葉脇の目よりも、茎や枝の上部にある芽の方を優先して成長しようとする。上部にある成長点で生産された物質が脇芽の成長を抑えるから。だから、その上部にある芽をピンチすることで、成長点も除去し分枝を促進させて成長後の姿を整えたり、花の数を増やしたりするためにする。

小田原でニワトリの解体をしたボクの気持ち・気づき


*解体の様子が書かれていると思うので、苦手な方は読むのを控えてください。

 

4/16,17の二日間、えーちゃんの住む小田原へ。作業の詳細は後述しますが、当日はニワトリの解体からビニールハウスの張り作業まで体験した。

生きている動物が、スーパーに並ぶ姿になるまでの工程を見るのは初めてのことで、多分一生忘れることのないものだと肌で感じた。

まずは、この機会をくださったえーちゃんとMottaiのみなさん、養鶏場のみなさん。そしてニワトリさん、ありがとうございました。

 

解体WSの会場から見えた景色。緑が生い茂り、とても綺麗。


1日目:解体WSを経て感じた「命をいただく」ということ

解体されるニワトリたち

鶏卵用のニワトリ(レイラー)は大体4~5年くらいが寿命。食肉用ではない以上、食べてもお肉が細くて美味しくないという理由から、卵が産めなくなると処分される。

処分にかかる費用は「1円」。多分、この会に参加してなかったら知ることのなかった現実だと思う。

養鶏家の方は、このWSを通じて少しでも食卓の裏側を知ってほしいと言っていた。

案外簡単な解体

解体の流れの説明を聞いて思ったのは、意外とすんなりと終わるんだなということ。クリスマスでよく見かける丸焼きの姿になるまでの所要時間は大体20分くらいで、過程は至ってシンプルだった。

解体の流れ

  1. 羽交い締め(暴れないようにするため)
  2. 首を捻って気絶させる(首を切断するときに痛みをなくすため)
  3. ナイフで首を断つ
  4. 三角コーンに胴を入れ血抜き
  5. お湯に潜らせた後、ビニールで蒸す(毛穴を開く)
  6. 羽を取り除く

個人的に、おもしろい(?)と思ったのは「羽交い締め」。格闘技とかでよく耳にするあの技名も、実はここから来てて、翼を後ろでクロスさせるとトリは本当に動けなくなる。

首を断つ瞬間に訪れた静寂

生きている動物の命を意図していただくのは、魚以外は多分初めて。魚を締める時も若干の抵抗感があったからこそ、正直罪悪感と恐怖心があった。

なるべく痛みを和らげるために、首を捻って気絶させてからナイフで首を切断するのだが、ニワトリも動物。自分の死が近づくことを察知してなのか、動いたり鳴いたりする。場の空気はとてもつもない緊迫感で張り詰めてて、それがあまりにも印象的だった。

”価値観は人それぞれだ”

「価値観は人それぞれだから、どの段階から食材と捉えるかに正解はない。生きている状態から”食材”と捉える人もいる。批判せず、違いさえも楽しもう!」

解体前にNPO法人MOTTAI代表の菅田さんの言葉が今でも頭に残っている。

当日の参加者は、これからバングラデシュに移住するからニワトリの解体方法を知りたい人、焼き鳥屋を経営しているからどうやってお肉になるのか知りたい人etc..それぞれの目的を持っていた。だからこそ、いざみんなで解体!となった時にそれぞれの表情や雰囲気と、自分の抱いていた心情とのギャップにすごく驚いた。

でも、上の言葉があったから、(個人的に)衝撃的なシーンに対して柔軟に捉えることができたと思う。これからも大切にしていきたいし、ぜひみんなにも共有したい。

 

 

2日目:”育てる”よりも育てる準備

食肉用のニワトリ(ブロイラー)

2日目にお邪魔した養鶏場の食用ニワトリ(ブロイラー)の大きさには驚いた。前日の鶏卵用のニワトリより2周りは大きく、鳴き声もすごく図太い。

ブロイラーが出荷されるのは大体生後45日ほどで、一般的に「若鶏」と呼ばれてる。4~5年生きるレイラーの成体よりも大きくて、そのために品種改良されたり、かなり過酷な食事を強いられることが多いという。

特にブロイラーに対して批判をするつもりはないし、僕らの生活を担っている大事な職業なので逆に従事されている方たちに対しては感謝の気持ちでいっぱいだ。けど、そういう現実もあると知ると複雑な感情になる。

ビニールハウスの修繕からわかる飼育する厳しさ

当日のメイン作業は、経年劣化したビニールハウスの屋根を修繕する作業だ。約3年ごとにビニール屋根を張り直すらしいが、ちょうどお手伝いの日がそのようだった。

ブロイラーが朝昼晩を認識し、生活リズムを安定させるには日光が必要不可欠である。そのため、木材やコンクリートなどの日光を遮断するような素材は不向きだ。ただ、劣化も早く、飼育する面積も広いビニールハウスの修繕作業は過酷だった。

足場はとても狭く、不安定。とりわけ悪天候であれば、滑りやすく、落ちれば怪我は免れない。10cmあるかないかの足場を慎重に進みながら、重いビニールを手分けして広げてドライバーでとめていく。

正直、養鶏のイメージは餌をあげて、草をモサモサして住処をつくるような作業が全般だと思っていたが、現実はもっと過酷だ。ブロイラーが"育つ"のも、農家さんが"育てる"のも、どちらも命懸けだと痛感した。

 

 

感想

消費者目線での食卓と、生産者目線での食卓がこんなにも違うのかと感じさせられた。

「いただきます」の6文字が生まれるまでの過程を、ほんの一部ではあるが体験できたことで、これまでの当たり前を疑うきっかけになったと思う。

ニワトリさんをはじめ、えーちゃん、MOTTAIの皆さん、ありがとうございました。

▽【HP】NPO法人MOTTAI

www.npo-mottai.org